海示は走り続けた。鬼に遭遇しようともしなくても走り続けた。外の雨は止み、静寂の夜が漆黒のマントを空に広げた。

―――お前カイジっていうのか、変な名前だな。

ふと柊の声を思い出す・・・懐かしく頭の中に響き渡った。ぐっと腕で涙を拭うと再び海示は走り出した。また遠くで凶器の音が鳴り渡る。自分の足音が廊下中に鳴る。全速力で鬼を撒く、サッカーで鍛えた足腰で完全に鬼を撒くのに然程時間は要さなかった。

―――俺は森 柊よろしく。

拭ったはずの頬には優しく涙が伝う。視界が翳んで良く見えない。ただ海示は走り、走り、走った。海示の体力は限界を越えて、疲れを感じなっていた。誰も助けは来ない、もう見捨てられた。海示が振り返ると、鬼は居なくなっていた。そして、一揆に疲れが回り、その場にへたり込んだ。
「海示、探したんだぞ」
 大きな声とともに遼が走ってきた。後ろには宏平が居る。海示は安堵の表情を漏らし、遼に飛びついた。
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