雨が静かに降っている。眼下には見慣れた町並み、傘から落ちる雨滴が太股を濡らして気持ちが悪い。タクシーが水飛沫を上げながら佐藤 利治の傍らを通り過ぎて行った。中学校に行く足取りが重い・・・。生徒達の大量虐殺の現場に今から行こうとしているなんて考えたくもなかった。雨は強くなるばかりで一向に止む気配は無かった。佐藤はため息を吐いた。ため息は白く濁り空中を漂った。
「春もそろそろ老けてくるな・・・」
 独り言を言ってみる。口元がむず痒くなり、鞄からミネラルウォーターを取り出し口を潤した。
「おはようございます」
 突然目の前の黒いワゴン車が止まり、中から佐々木 駿が出てきた。佐々木も同僚で、学校の教師だ。佐々木は佐藤に車に乗るように顎をクイッと車の中に向けた。佐藤はゆっくりと車に乗り込むと、芳香剤の匂いが鼻腔を擽った。チャイルドシートが隣に置いてあり、そのそばには携帯灰皿があった。携帯灰皿には煙草が溢れんばかりにハイっていた。
「すいません、かたずいてなくて」
「いやいや、気にしないでください」
 教師同士のくだらないやり取りより今は生徒の安否が大事だった。

”教師の皆様はゲームの妨げになるので、3日間学校の出入りを禁止します”
今日、佐藤は、スピーカーから聞こえてきた声を思い出した。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

COMMENT FORM

以下のフォームからコメントを投稿してください