一時の静寂が終わり、一転、生徒の達のざわめく声が体育館に響く。遼は何気なく窓の外を見た。一匹の鳥が高く、小さな声で鳴いていた。
「静かに」
 校長の声が前方から聞こえると生徒は静まり変える。この生活がずっと続けばいいのに...。心の中で遼は呟いた。この一年の間、生徒はほぼ壊滅、生き残った僅かな生徒はそのままに、他の中学の生徒をこの中学に移し替え、生徒の数をなんとか養った。なので、この中学の生徒は、依然の悪夢を知らない。噂にはなっているが、生徒も噂程度にしか受け止めていない。そして、生き残った生徒はこの悪夢のことを話そうともしない。なぜなら、その悪夢で死んでいった生徒や、その遺族がとても痛ましかったからだ。
「ここで、転校生を紹介する」
 夏の風が体育館に澄み渡り、穏やかな風となり静かにカーテンを揺らす、ユラユラとした陽炎が消え、一瞬だけすべての邪魔なものが消えたように思えた。
「転校生の松之木 輝君だ。」
「松之木です、宜しく」
 抑揚のない声はすぐに夏の暑さに掻き消され、もう一度風が吹いたように感じる。なぜか肌寒さを感じ遼は身震いした。人生の歯車が狂々と廻り始めた。今まで止まっていたものが勢いよく動き出すような、不思議な感覚が襲う。蝉の鳴き声で僅かな時間だけ止まり小さな鳥がもう一度小さく鳴いた...。まるで、何かを知らせるように。

スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

COMMENT FORM

以下のフォームからコメントを投稿してください